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大注目の日本人対決となったWBO世界バンタム級タイトルマッチ12回戦が3日、東京・有明アリーナで行われ、チャンピオンの武居由樹(大橋)が元WBCフライ級王者で1位の比嘉大吾(志成)を115—112、114—113、114—113の3—0判定で退け、5月に獲得した王座の初防衛に成功した。
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サウスポーの武居は左アッパー。オーソドックスの比嘉は左フック。両者はこの一撃をキーパンチにし、フルラウンドにわたって相手をねじ伏せにかかった。もちろんそれを当てるための駆け引きも繰り広げられてはいたのだが、リング上を覆い尽くしていた雰囲気は、まさに決闘の二文字だった。
好スタートを切ったのは比嘉だった。右を突き、上体を動かしながら出方を窺った武居に対し、比嘉は鋭い踏み込みと同時に左フックを振るって距離を詰め、さらに左フックで襲いかかる。それに対し、臆することなく足を止め、右フック、左アッパーをねじ込みにかかる武居。いずれのブローもヒットする間合いで互いの思いが交錯する。どちらが当てて倒すのか。戦前から期待された戦いが、それ以上の熱を帯びて推移していく。
左フックのダブルと同時に距離を詰める比嘉は、さらに右から左フックを返して武居を煽る。4回には比嘉が武居にロープを背負わせて左右フックを叩きつけ、武居の反撃に左フックを合わせる。が、武居は右サイドへのターンで比嘉の連打をいなし始めると、比嘉の飛び込みざまに左アッパーを合わせにかかる。これによって比嘉が“間”を築いてしまうと、武居はさらに右フック、左アッパーを追撃。6回、フリッカージャブを多用して自身の距離を作った武居は、左アッパーに加えて右アッパーもヒット。比嘉が入りづらく、手数も減ってしまう展開になりかけた。
だが、比嘉はモーションが小さく、強いジャブでペースを引き戻す。これを再三再四もらってしまう武居の右目周辺が腫れ始める。勢いに乗りたい比嘉が、ふたたび前に出て連打を繰り出していくが、武居は微妙に顔の位置をずらし、決して芯では食わなかった。比嘉得意の左ボディーブローを出させなかったのも大きかった。
9回に左目上を打撃によってカットした武居を、比嘉は11回、左フックでダウンさせる。これは頭部をとらえ、その勢いで武居が足を滑らせたもので、ダメージはなかった。その証拠に武居は猛然と反撃し、左アッパーをヒット。慌てた比嘉がフットワークを使って追撃をかわしにかかった。この回、バッティングで左目上をカットした比嘉は、武居の左アッパーによって右目下が腫れてもいた。
最終回、前回のダメージが残る様子の比嘉は、なおもフットワークでアウトボクシングを始める。KOチャンスと見た武居が比嘉にロープを背負わせて連打。右アッパーで比嘉の顔面を跳ね上げたが、比嘉も頑なにダウンを拒否。終了ゴングと同時に両者は抱き合って健闘を讃え合った。
2戦連続判定勝負となったことにうな垂れたものの、10月に試合を控える“ライバル”那須川天心(帝拳)にエールを送った武居は10勝8KO無敗。惜しくも2階級制覇ならなかった比嘉は21勝19KO3敗1分。